詩集の紹介

倉橋健一さん詩集「無限抱擁」

柔らかい。読み終えてすぐに思ったこと。 多く出て来る「眠り」がそう感じさせたのだろうか。 夢は常に平和ではないけれど 夢に見る対象と同化しようとする。 または現実の話に誠実であろうとし眠れなくなる。 夢しても現実にしても語り口調が優しい物語のよ…

木村孝夫さん詩集「十年鍋」

東日本大震災、原発事故から十年というと 記録だけでなく、記憶のお話になる。 特に「帰宅困難地域」の様子や変化。 自ら求めて覚悟して読んだ。 重くない。 詩の言葉にあふれていると思う。 胸の痛むストーリーはいくつも出て来る。 でもこちらの呑気さに突…

川口晴美さん詩集「やがて魔女の森になる」

人間は水と共に生きている。ということ 強く感じさせてくれました。 詩人の故郷は海に近く 水との付き合い方が、意識の中 密なのも伝わります。 無邪気な思い出の中に 問題を提起したりする。 素直な気持ちで連れていかれて 少しもの悲しさを残してくれる。 …

疋田龍乃介(笑福亭智丸)さん「歯車vs丙午」

歯車vs丙午 作者:疋田 龍乃介 思潮社 Amazon 詩人・疋田龍乃介さん =落語家としてご活躍の笑福亭智丸さん 最初、私は固まってしまいました。 見たこともない単語がいっぱい。 でもずんずんと進んでいくと響く言葉に出会う。 「犬のひげのがん」とか言われた…

辻和人さん詩集「ガバッと起きた」

おもしろいです!! ある日、ガバッと起きて「結婚しよう」思う47歳。 どうやって婚活で奥様となるミヤコさんと出会い、 距離を縮め、結婚し、どんな生活を始めるか。 どこまでも前向きにとらえて いくつもの関門を通ってゆく その楽しさが読者に伝わって…

北爪満喜さん詩集「Bridge」

Bridge 作者:北爪 満喜 思潮社 Amazon いろんな感情が混ざり合って、何と言うか。 水が色々な形で登場するからか 情景からの心象で なめらかに運ばれてしまう。 しんしんとしたテンポの中で 記憶したい行に出会う。 例えば 「まだ落ちてこない雨が」 「星空…

マーサ・ナカムラさん詩集「雨をよぶ灯台」

雨をよぶ灯台 新装版 作者:マーサ・ナカムラ 思潮社 Amazon すごい。 現実かと思いきやあり得ない事象が起こる。 昔の映画のような淡さをまといつつ、 「生と死」が突如現れて 悲しむ間も与えないくらい スーッと切り開かれる。 滑稽に思えるときさえある。 …

川口晴美さん詩集「Tiger is here」

Tiger is here. 作者:川口 晴美 思潮社 Amazon 今ごろ感想を書くのもなんですが 後を引いた詩集として 自分のために記させてください。 最初、虎が傍らに感じるのが 私にはピンと来なかったです。 だって怖いイメージだから。 ところが、父の話、故郷の話に…

久石ソナさん歌集「サウンドスケープに飛び乗って」

サウンドスケープに飛び乗って (新鋭短歌シリーズ50) 作者:久石ソナ 発売日: 2021/02/07 メディア: 単行本(ソフトカバー) 「音景」とも訳される「サウンドスケープ」。 なるほど。色々な水が出てくるから 音も鮮やかなのだ。音も風景もということ。 水だけ…

萩野なつみさん詩集「トレモロ」

2021年中原中也賞候補詩集 読み始めてすぐ、たぁ~! と感嘆の声を上げました。 お手本のようでもある。 なんか語彙の豊富さから 過剰でない調度いい言葉が 抽出され、連なったら 愛おしい感覚になってる みたいな感じです。 たくさんの夏を淡く儚く 身体を…

広田修さん詩集「societas」

「ソシエタス」造語?複数形? 「ソシエタ」で「社会」と出てきました。 スペイン語と思い込みすぎたかしら? 前半にある「小詩集 社会」のシリーズは パロディとして読んでいいと思う。 おもしろい!星新一っぽさがあった。 理屈に従っているのに そっちの…

新川和江さん編 猫 ポエム・ファンタジー

ずるい。1986年!もう中古しかない。 知らなかったこんなのがあったこと。 猫の写真に言葉を添えてって本 いっぱいありそうだけど これは先に猫の詩が集められたもの。 それはボードレールから北原白秋から もちろん?谷川俊太郎さん、鈴木ユリイカさん …

三角みづ紀さん詩集「どこにでもあるケーキ」

「わたしは十三歳になっていた」 ほんとに違和感ないんです。 どうしてなれるの!って思ったくらい。 あの年頃のしかも内向的な少女の 健気さを感じて泣きそう。 もちろん大人の詩人の安定感の中に それはあるんだけど、 かわいくてかわいくて、 でもそんな…

柿沼徹さん詩集「某日の境」

過去のこと、家族や知人のこと 単なるノスタルジーじゃなくて 心の中、鈍痛が。 多くの人がほんとは知ってて 知らない振りをしてることを 思い出させるような。 寓話のような柔らかさで どんな時でも目は見てる。 しかもその時必要な視点なのか? 意外な場所…

志村喜代子さん詩集「人隠し」

ちょっと怖い夢なのか、近い未来なのか 現実的なほどドキドキする。 「人隠し」素直にとらえるかどうか 私にとっての課題のように思う。 でも本来怖くないものかな。 草花への目が優しいから 道路が黒く浮かび上がってくる。 コントラストくっきり。 「破線…

腰越広茂さん詩集「またいつか」

とてもさりげない装丁で 中身のスケールは大きい。 自然を見る目は細かくも丁寧で それは宇宙につながる。 届かない人たちへの思いが そういう視線を作っている。 優しい語りにのせられて ぶれない強い詩集だと思いました。

望月遊馬さん詩集「もうあの森へは行かない」

入りは難しいけど慣れます。 慣れたら中毒っぽくもなる。 何だか高貴な言葉たちに ファンタジー!と目を細めていたら 胸を突くような表現と出会い、 コミカルな瞬間もあり なぜかテンポ気持ちいい。 なんで、こんな密度で 面白いフレーズを 出せるのだろう!…

そらしといろさん「もうずっと静かな嵐だ」

詩を知らない主人に見せたら スゴいと言った! キレイなだけじゃなく 体にズンと来る。 一定の低いテンションがあって 冷静な目を持ってるからか 読み手も「そうそう!」と思う。 自分が書き手としては 生意気にも「やられた~!」の連続。 いろんな場面、ほ…

水沢なおさん詩集「美しいからだよ」

人によって読み方がもっとも変わるのが詩? そこの意見が分かれるのも詩。 すごい。うまい。つかみどころがない。 そう思って前半読んでました。 僕が何人登場しても 女性と中性の世界みたい。 と思ってたら、 最後に男が出てくるのです。 個人的な感触です…

小川三郎さん詩集「あかむらさき」

ひとつひとつ不思議な世界ですね。 観察から始まってるのに、どこにもない景色になる。 なんでもない風景に対する違和感。 それが静かに現実を曲げてしまうのかもしれない。 あくまで主体は主体。 読みなれた言葉たち、と言いながら 今更「全詩集、ホラーな…